私たちの周りには病原菌がたくさんいます。一握りの泥の中には何万、何百万という病原菌がいるでしょうし、空気中にも無数の病原菌が漂っています。私たちの皮膚や体内にさえ、病原菌は存在するのです。
     
普通は無害
 微生物にはたくさんの種類がありますが、大部分は無害で、ごく一部が病原性を示します。それら病原性微生物も、私たちが健康で体力が普通にあれば、病原性を発揮できません。体力が落ちたときや、けがをして皮膚の防衛機能がこわされたときなどに、病原性微生物の侵略を受けると病気になるのです。
     
病原菌をやっつけるお薬
 病原菌をやっつけるお薬には、抗生物質や化学療法剤があります。お薬には、病気を原因から治すものと、症状を抑えて自然回復力を発揮しやすくするものがありますが、抗生物質は前者の代表です。
     
抗生物質とは
 青カビは、自分の繁殖のために、ほかのカビや細菌の繁殖を抑える物質をつくります。これをペニシリンと呼び、このような物質を抗生物質と名づけました。抗生物質は、微生物由来のものをもとにして、いろいろと工夫を加えてたくさんの種類がつくられています。
 抗生物質にはペニシリンの仲間のほかにも、エリスロマイシンやストレプトマイシンの仲間、クロラムフェニコールの仲間など、いくつかのグループがあります。病原菌の種類によって、効きやすい抗生物質と効きにくい抗生物質がありますから、原因となった病原菌を調べ、それに効く抗生物質を選んで服用すれば、早く治ります。しかし、症状だけから病原菌を決めるのはなかなか難しいので、なるべく広い範囲の病原菌に効く抗生物質が優先して使われることになるのです。
     
耐性菌ーMRSAなどー
 抗生物質は、感染症の治療にすばらしい効果を発揮し、使用量はどんどん増えました。やがて使いすぎのツケが、抗生物質が効かなくなった耐性菌となって現れてきました。
 MRSAということばをご存知でしょうか。これはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin Resistant Staphylococcusaureus)の略で、メチシリンという抗生物質に耐性をもった微生物の一種です。黄色ブドウ球菌はどこにでもいる微生物で、ふだんは何も悪さをしませんが、体力が落ちてくると敗血症や肺炎、下痢を起こしやすくなります。MRSAは、メチシリン(ペニシリンの仲間)にも耐性を持ち、有効な抗生物質がほとんどないため、社会問題となりました。現在はMRSAにも効果がある抗生物質が開発されましたが、耐性菌の出現が報告されています。

 

 

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